RPA × 生成AI × 業務の引継ぎ支援――人材流動時代を生き抜く新しい武器
- 兎澤直樹
- 10月9日
- 読了時間: 5分

はじめに
近年、多くの企業で人材の流動性が高まっています。新入社員が入社して数年で転職してしまうことも珍しくなく、またテレワークや副業の普及により、従来よりも「人の出入り」が速い時代となりました。その結果、企業にとって避けられない課題が「業務の引継ぎ」です。本来ならば、前任者が後任者に丁寧に業務を伝え、マニュアルを整備してスムーズに移行することが理想です。しかし現実には、時間的制約や属人化の影響で「曖昧な説明」「不完全なドキュメント」が残され、後任者が苦労するケースが後を絶ちません。
そこで注目されているのが RPAと生成AIを組み合わせた業務の引継ぎ支援 です。RPAが定型業務を正確に実行し、生成AIがその背景や手順を自然な言葉で説明することによって、従来の引継ぎ業務を大幅に効率化できます。本記事では、その仕組みと導入効果、そして今後の可能性を掘り下げていきます。
業務引継ぎの「つまずきポイント」
引継ぎ業務がうまくいかない理由は、多くの場合次のような要素に集約されます。
マニュアルが更新されていない
数年前に作成したまま放置され、現行のシステムや手順と乖離していることが多い。
属人化された知識
「この業務はあの人しかできない」といった状態。説明も個人的な勘や経験に依存しがち。
時間不足
退職日や異動日が迫る中で十分な引継ぎ期間を確保できず、断片的な情報しか残らない。
こうした問題は、後任者の業務習得に大きな負担を強い、結果的に生産性を低下させてしまいます。
RPAが担う「業務の再現性」
RPAは、PC上で人間が行う操作を記録・自動化する仕組みです。たとえば経理部門での請求書処理、営業部門での顧客データ入力、総務での勤怠集計など、定型的な業務を正確に繰り返すことができます。
引継ぎにおいて特に有効なのは、RPAが業務そのものを「動くマニュアル」として残せる点です。従来のマニュアルは文字や図で操作を説明するものでしたが、RPAシナリオなら実際の処理がそのまま後任者の目の前で再現されます。これにより「手順を誤解する」「操作を飛ばす」といったリスクが減り、引継ぎの正確性が飛躍的に向上します。
生成AIが担う「背景の理解」
一方で、RPAは手順の自動化には強いものの、「なぜこの業務が必要なのか」「何を意識してチェックすべきか」といった文脈的な説明はできません。そこで登場するのが生成AIです。
生成AIは、業務フローや関連文書を読み込み、自然な言葉で解説や補足を行うことができます。例えば次のような使い方が考えられます。
RPAで請求書入力を自動実行しながら、生成AIが「この金額は仕訳上『未払金』として処理する理由」や「このチェック項目を怠ると決算に影響が出る可能性」を解説する。
新任の担当者がAIに「このデータ入力の注意点は?」と質問すると、関連マニュアルや過去の事例を踏まえた回答が即座に返ってくる。
つまり、RPAが「正確な作業」を、生成AIが「理解の補完」を担当することで、引継ぎは単なる操作伝達から 知識の共有 へと進化するのです。
組み合わせが生む相乗効果
RPAと生成AIを組み合わせることで、次のような効果が期待できます。
業務の抜け漏れ防止
RPAが必ず定型業務を実行するため、「担当者が忘れていた」というミスを防げる。
学習コストの削減
生成AIがその場で説明を行うため、後任者は業務を実際に体験しながら理解できる。
マニュアル更新の自動化
業務内容の変更をRPAシナリオに反映すれば、生成AIが説明を自動的にアップデートし、常に最新の引継ぎ情報を提供できる。
この相乗効果こそが、従来の引継ぎ業務にはなかった新しい付加価値です。
実際の導入シナリオ
例えば、ある中堅企業の総務部門を想定してみましょう。従業員の入退社手続きを行う際には、社会保険の申請や各種システムへの登録が必要です。
従来なら前任者が「この画面ではここを入力して」と口頭で説明し、後任者がメモを取りながら進める流れでした。これでは不明点が残りやすく、業務定着に時間がかかります。
しかしRPAで「入社処理シナリオ」を自動化し、生成AIが「この入力項目は雇用保険の届け出に必須です」と解説すれば、新任者は短期間で安心して業務を習得できます。さらにAIは「法律改正でこの項目が追加されました」と最新情報も補足可能です。
こうした仕組みが整えば、異動や退職が発生しても部門の安定性を損なわずに済みます。
導入のハードルと解決策
もちろん、導入にあたっては課題もあります。
初期投資への不安
RPAや生成AIのツール導入にはコストがかかります。ただし長期的には人材教育や業務停滞のリスク回避による効果が大きく、投資回収は十分可能です。
シナリオ作成の負担
RPAの構築には一定のノウハウが必要です。最近ではノーコードで直感的に設定できるツールも増えており、外部のRPAサポートサービスを利用すればスムーズに立ち上げられます。
AI回答の正確性
生成AIは万能ではなく、誤回答の可能性もあります。そのため、社内ルールや公式マニュアルと連動させ、回答に必ず根拠を添える運用が重要です。
これらの対策を講じれば、導入ハードルは大きく下がります。
今後の展望
将来的には、RPAと生成AIがさらに高度に連携し、自律的に業務改善を提案する引継ぎ支援システム へと発展していくことが予想されます。
例えばAIがRPAの実行ログを解析し、「この手続きは二重入力が多いため、ワークフローを統合すべき」と改善提案を行うようになるかもしれません。単なる業務継承にとどまらず、組織全体の知識資産化と効率化を推進する存在へと変わっていくでしょう。
まとめ
人材の流動が当たり前となった現代において、業務の引継ぎは企業の命運を左右する重要な課題です。RPAは業務を正確に再現し、生成AIはその背景をわかりやすく解説する。両者を組み合わせることで、これまで属人化に悩まされてきた引継ぎ業務は大きく変わります。
「人が辞めても業務が止まらない仕組み」を整えることは、企業の持続的成長に直結します。いま引継ぎの属人化に課題を抱えている企業こそ、RPAと生成AIの導入を検討する絶好のタイミングです。
業務の正確性と理解の深さを両立する新しい形の引継ぎ支援――それが RPA × 生成AI × 業務引継ぎ支援 の真価なのです。
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