RPA×AI×セキュリティの融合がもたらす「次の標準」
- 兎澤直樹
- 12 分前
- 読了時間: 3分

増え続けるサイバーリスク、限界に達する人の監視
サイバー攻撃の高度化と複雑化が止まりません。標的型攻撃、内部不正、ゼロデイ攻撃…。それらに対応するため、企業や組織は日々、膨大な監視ログと格闘しています。
「何かおかしい挙動はないか?」「これはただのミスか、それとも意図的な不正か?」
こうした判断を人の目と手だけで続けるには、あまりに荷が重い。現場では疲弊し、見逃しが増え、結果として重大インシデントに繋がってしまう例も後を絶ちません。
では、どうすればいいのか?
その答えのひとつが、RPAとAI、そしてセキュリティの融合です。
RPA×AI:目視チェックの限界を越える
RPAは、あらかじめ設定された業務をルールベースで高速かつ正確に処理する自動化ツールです。たとえばセキュリティ運用では、以下のような使い方が可能です:
SIEMから出力されたアラート一覧を毎日取得し、所定のテンプレートに入力
閾値を超えるアクセスログを自動で抽出し、SlackやTeamsに通知
セキュリティベンダーの公開IOC(Indicator of Compromise)と社内ログを突合
これだけでも人の手を大幅に減らせますが、RPAの真価はAIとの連携によってさらに高まります。
AI:ノイズの山から「異常」を見つけ出す眼
AIは、従来のルールベースでは検知しきれなかった「非定型の異常」を見抜くことができます。
たとえば
深層学習を活用し、過去数ヶ月の正規ログを元に正常挙動を学習
そこからの逸脱パターン(時間外アクセス、通常とは異なるIP帯からの接続など)を検知
RPAがそれらをレポートとして自動生成し、CSIRTに通知
つまり、「気づけなかった異常」に気づき、そして「気づいたら即動くという流れが、RPA×AIによって可能になるのです。
実際にあった事例:AIが見抜いた内部不正
ある企業では、月間2億件以上のログをAIで解析し、通常では気づけない微妙なログインパターンを発見。それは一見、権限内の正常操作に見えるものでした。
しかし、AIが異常と判断した理由は「通常とはわずかに異なる」時間帯や使用端末、そしてリモートアクセスの地理情報の差分。
RPAが即座にそのデータを抜粋し、定型フォーマットでCSIRTチームに提出。調査の結果、契約終了予定の社員による内部データの持ち出しだったことが判明し、迅速な対応に繋がりました。
自動化であっても「ブラックボックス」にはしない
こう聞くと「すごい!全部AIとRPAに任せればいいじゃん」と思うかもしれませんが、重要なのは「透明性」です。
自動化するからこそ、「なぜそう判断したのか」「どのデータを使ったのか」という説明責任(アカウンタビリティ)がより求められます。
そのためにも、RPAとAIを活用する際は、
操作ログの保持
判定理由の可視化
再現可能なルール設定
が非常に大切です。
未来へ向けて:監視を「創造的」な仕事へ
今後さらに重要になるのは、「人の役割の再定義」です。
RPAとAIが定型業務やデータ抽出・初動対応を担うようになれば、人間は「本当に判断が必要な場面」に集中できるようになります。
予測不能な新種の攻撃への対応
ビジネスリスクとしての解釈
社内への啓発や教育
セキュリティは「監視の仕事」から「戦略的判断と提案の仕事」へと変化していく。そのための土台づくりとして、RPA×AIの導入は、今まさに現場に求められているのです。
まとめ
RPAで「処理を漏らさない」
AIで「異常を見逃さない」
人間で「意味を見誤らない」
この三位一体が、次世代のセキュリティ運用の鍵になります。
セキュリティ業務の「限界」に向き合い、「可能性」を開いていく。
それを実現するのが、RPA×AI×セキュリティの力です。



