RPA × 生成AI × 作業ミス削減がもたらす次世代の業務効率化

兎澤直樹
9月15日
読了時間: 4分

更新日：9月29日

はじめに：なぜ「作業ミス削減」が重要なのか

企業の生産性を阻害する要因として、単純作業における「作業ミス」は常に上位に挙げられます。入力漏れ、転記ミス、集計誤り、報告書の表記揺れなどは、業務全体の効率を落とすだけでなく、顧客信頼の低下や法的リスクにつながることもあります。近年は RPA がルーティン作業を代行することで、こうしたヒューマンエラーを大幅に減らしてきました。しかし、RPA単独では対応できない「想定外のケース」や「判断を伴う業務」に弱点がありました。

そこで注目されているのが、生成AIとの組み合わせです。自然言語処理や文書要約に強い生成AIを組み合わせることで、これまで自動化の対象外だった業務領域に踏み込み、さらなる作業ミス削減を実現できます。

RPAと生成AIの役割分担

RPAと生成AIを「競合するもの」と捉えるのではなく、「得意分野を補完し合うもの」と考えるのがポイントです。

RPAの強み
- 定型作業の高速・正確な繰り返し
- システム間のデータ連携や転記処理
- 時間に依存せず24時間稼働
生成AIの強み
- 文書や文章の意味理解
- 曖昧な指示や表記揺れへの対応
- 大量データからの要約や分類

つまり、「RPAが手と足、生成AIが頭脳」 という関係で組み合わせることで、作業全体の正確性を引き上げることが可能になります。

作業ミス削減に直結する具体的シナリオ

1. データ入力時の誤記防止

従来のRPAは「ルール通りに転記する」ことしかできませんでした。生成AIを組み合わせると、入力内容の表記揺れ（例：「㈱」「株式会社」「（株）」）を自動統一したり、住所の形式を標準化したりすることができます。これにより、後続の処理でエラーが発生する確率を大幅に低下させられます。

2. メール処理のヒューマンエラー削減

社内外のメールから必要情報を抽出し、RPAが自動で管理システムへ登録する流れは一般的です。しかし本文に余計な情報が混じっていると、誤登録のリスクがあります。ここで生成AIを用いれば、文脈を理解した上で「必要な項目だけを抽出」でき、誤入力を未然に防げます。

3. レポートや帳票の自動チェック

報告書や契約書などに潜む誤字・脱字、計算ミス、フォーマットの不統一は、最終承認の段階で発覚すると大きな手戻りになります。RPAで書類を収集し、生成AIで内容をレビューすることで、人間のダブルチェックに近い精度を自動化できます。

4. FAQやマニュアルの参照ミス防止

現場担当者がマニュアルを読み違えることによる作業ミスも少なくありません。生成AIをフロントに配置し、自然言語で質問するだけで適切な手順を提示する仕組みをRPAと連携させれば、誤った手順によるエラーを防げます。

導入効果と期待できる成果

RPAと生成AIを組み合わせることで期待できる効果は次の通りです。

ヒューマンエラーの減少
入力や確認作業のAIサポートにより、人的なケアレスミスを削減。
品質の均一化
各担当者によるばらつきをなくし、一定水準の成果物を安定して提供可能。
監査対応の効率化
自動化されたチェック履歴を残せるため、後からの監査や検証にも強い。
従業員の心理的負担軽減
ミスが許されない業務のプレッシャーを軽減し、より創造的な業務に集中できる。

導入時の注意点

ただし、導入にあたってはいくつかの留意点もあります。

AIの判断精度の限界
生成AIは万能ではなく、誤った判断を下す可能性もあります。必ず「人間による最終確認」または「二重チェックの仕組み」を設けることが重要です。
データセキュリティへの配慮
機密情報を扱う場合は、生成AIの利用環境が社内規定や法的要件に準拠しているかを確認する必要があります。
業務プロセス設計の見直し
既存業務をそのまま自動化するのではなく、RPAと生成AIを組み合わせた新しいフローを再設計することが成功の鍵となります。