RPA × 生成AI × メンテナンス作業効率化がもたらす新しい業務改善のかたち
- 兎澤直樹
- 9月27日
- 読了時間: 5分
更新日:9月29日

はじめに
企業の生産設備やITシステムのメンテナンス業務は、安定稼働を支えるうえで欠かせない存在です。しかし、その作業は点検や報告、異常検知、予防保全といったルーティンに膨大な時間を要し、熟練担当者の負担になりがちです。特に、記録や報告書作成といったバックオフィス的なタスクは、作業時間の大部分を占め、現場作業に集中できないという課題を抱える企業も少なくありません。
こうした背景の中で注目されているのが、RPAと生成AIを掛け合わせたメンテナンス作業の効率化です。RPAは定型的な業務の自動化を得意とし、生成AIは人間が判断してきた記述や分析を補完する力を持っています。この2つを組み合わせることで、従来の単純な自動化を超え、より高度なメンテナンス業務の効率化が実現可能になります。
RPAと生成AIを活用する意義
まずはRPAと生成AIそれぞれの特徴を整理しましょう。
RPAの強みは、定型的で手順が明確な作業を正確かつ迅速に実行できる点です。システムへの入力、ファイル整理、定時レポート作成など、人が繰り返して行うルーティンワークに強みを発揮します。
生成AIの強みは、膨大な情報から柔軟に文章を生成したり、異常の可能性を示唆する解釈を加えたりできる点です。単なる自動入力に留まらず、報告書の文章作成や予兆データの解釈など、従来は人間の判断に頼っていた領域を補助します。
この二つを組み合わせることで、例えば「点検データを自動収集 → 異常値を検出 → 自然言語で報告書を生成」という一連の流れを自動化できるようになります。
メンテナンス業務での課題
メンテナンス業務は企業規模や設備の種類を問わず共通した課題があります。
記録作業の煩雑さ
点検結果をエクセルや管理システムに入力する作業は膨大で、記録漏れや入力ミスも起こりやすい。
報告書作成の負担
点検ごとに文章で報告書を作成する必要があり、現場担当者が残業して仕上げることも多い。
異常検知の難しさ
異常値を検知しても、その背景や重要度を判断するのに時間がかかり、対応が遅れるリスクがある。
人材不足 熟練技術者の高齢化が進む中、若手が十分に育たず、作業が属人化しやすい。
これらの課題を解決する手段として、RPAと生成AIの組み合わせは非常に有効です。
実行例①:点検データ入力の自動化
ある製造業の工場を想定してみましょう。設備ごとの温度、圧力、振動などを日々チェックし、エクセルに記録していく作業があります。従来は現場担当者が紙にメモし、後からパソコンに入力していました。
ここでRPAを活用すると、点検端末やセンサーから取得したデータを自動でエクセルや管理システムに入力できます。入力の正確性が高まり、担当者は記録のために机に向かう必要がなくなります。
さらに生成AIを組み合わせると、「本日の振動値は過去平均と比較して3%高い」などの要約コメントを自動で生成し、担当者に注意を促す仕組みも構築可能です。単なる数値入力だけでなく、データの意味を理解した補助を実現できるのです。
実行例②:報告書の自動生成
メンテナンス業務で大きな負担になるのが、作業後の報告書です。点検内容、異常の有無、今後の対応などを文章化するのは時間がかかり、表現のばらつきも生じます。
ここで活躍するのが生成AIです。点検データや作業ログをRPAが自動収集し、それを生成AIに渡すことで、報告書のドラフトを自動生成できます。例えば、
「9月10日 10:00〜12:00に設備Aの定期点検を実施。温度・圧力・振動のいずれも許容範囲内で、異常は認められなかった。ただし、圧力計の針に微小なブレが見られたため、次回点検時に追加観察を推奨する。」
このような自然な文章が自動で作成されれば、担当者は最終確認と修正だけを行えばよく、大幅に時間を削減できます。
実行例③:予兆保全の支援
センサーで取得したデータをAIが解析し、異常の兆候を示す場合があります。しかし従来は「閾値を超えたか否か」だけで単純に判断されるケースが多く、実際には不要なアラートが多発し、担当者を疲弊させていました。
生成AIを組み込むと、「閾値は超えていないが、過去半年の傾向からすると増加傾向にある」「似た事例では3か月後に部品交換が必要になった」など、解釈を加えたアラートが可能になります。RPAがその情報を自動でダッシュボードやメールに通知することで、現場は予防保全に基づいた効率的な対応が取れるのです。
実行例④:ナレッジの自動蓄積
現場作業のログや報告書は、将来的に貴重なナレッジとなります。しかし、膨大な量の文書を整理して検索可能な形にするには手間がかかります。
RPAを使えば、作成された報告書を自動でフォルダ分類し、生成AIによって要約を付与することが可能です。例えば「ポンプ設備の過去3年の異常傾向」を検索すれば、AIが要点を抽出して提示する仕組みを構築できます。これにより、若手社員でも過去の事例を素早く参照でき、属人化の防止につながります。
導入の進め方
RPAと生成AIをメンテナンス業務に導入するには、段階的なアプローチが有効です。いきなり大規模に展開するのではなく、まずは「点検データ入力の自動化」「報告書のドラフト生成」といった、影響範囲が限定的かつ効果の見えやすい領域から着手することが推奨されます。
また、導入にあたってはIT部門と現場部門が協力し、運用ルールを整備することが不可欠です。AIが生成する内容は常に人がチェックする仕組みを残すことで、安全性と信頼性を確保できます。
まとめ
メンテナンス業務の効率化は、企業の安定稼働と人材不足への対応に直結します。RPAは正確でスピーディーな定型作業を代替し、生成AIは人の判断を支える柔軟な知的処理を補完します。この二つを組み合わせることで、単なる省力化ではなく、現場担当者が本当に集中すべき作業に時間を割ける仕組みが実現できるのです。
「RPA × 生成AI × メンテナンス作業効率化」は決して未来の話ではなく、すでに現場に適用可能な技術です。小さな一歩から始めてみることで、企業全体のメンテナンス体制を進化させることができるでしょう。
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