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RPA × 生成AI × システム監視自動化が切り拓く次世代の運用管理

  • 兎澤直樹
  • 9月18日
  • 読了時間: 7分

更新日:9月29日

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はじめに


企業システムの安定稼働は、事業継続に直結する最重要課題です。サーバーダウンやアプリケーション障害は、ユーザー体験の低下だけでなく、売上損失やブランド毀損にもつながります。そのため多くの企業は監視ツールを導入し、エラー検知やアラート通知を行っています。しかし実際の現場では、「アラートの氾濫」「人手による原因切り分けの遅延」「夜間や休日の対応負担」などが解決されず、担当者の疲弊が目立っています。

そこで注目されているのが RPAと生成AIを組み合わせたシステム監視自動化 です。単なる自動化にとどまらず、AIの言語理解力を取り入れることで、膨大なログや通知を人間に代わって「理解し、判断し、次の行動を決める」仕組みを構築できるのです。本記事では、その仕組みと実行例を示しながら、導入の魅力をわかりやすく解説していきます。


従来のシステム監視の課題


従来のシステム監視は、ZabbixやNagiosといった監視ツールでサーバーの稼働状況やメモリ使用率をチェックし、閾値を超えたらメールやSlackにアラートを送信する仕組みが一般的でした。確かに早期発見には有効ですが、その後の対応は人間に委ねられているケースが大半です。

例えば「CPU使用率が90%を超過」という通知が深夜に届いた場合、担当者はまずVPNで社内に接続し、各種ログを確認して原因を特定します。場合によっては過去の障害履歴や依存関係を調べ、応急処置を施す必要があります。これらは一連の作業がルーチン化しているにもかかわらず、常に人間が手を動かし、判断を下さなければなりません。

また、アラートの件数が多いと「本当に重要な障害」が埋もれてしまう問題もあります。現場では「どうせまた誤検知だろう」と判断が遅れ、重大インシデントに発展することも珍しくありません。


RPAと生成AIによる新しいアプローチ


ここでRPAと生成AIを組み合わせると、従来の課題を根本から変えることができます。


  • RPA は、監視通知を受け取った後の一連の操作を自動化します。ログイン、ログ収集、特定のコマンド実行、リカバリ処理などを人間の代わりに正確に実行します。

  • 生成AI は、集められたログやエラーメッセージを自然言語として解釈し、状況を要約したり、過去事例と照合したりして「次に何をすべきか」を判断します。


つまり、RPAが「手」を担い、生成AIが「頭脳」として働く構造です。この組み合わせによって、単なる監視通知から「原因分析」「一次対応」「必要ならエスカレーション」までを自動的に進められるのです。


実行例:サーバー高負荷への対応


深夜2時、ECサイトを運営する企業のサーバーでCPU使用率が90%を超える状態が発生しました。従来であれば、監視ツールからメール通知を受けた担当者が慌ててVPNにログインし、サーバーの状態をコマンドで確認するところから始めます。30分以上かかることも珍しくありません。

しかし、RPAと生成AIを組み合わせた場合は以下の流れになります。


  1. 監視ツールがアラートを発報

    CPU使用率が90%を超えた瞬間、監視ツールが「サーバーA CPU過負荷」という通知を発信します。

  2. RPAが通知を受け取り、サーバーにログイン

    あらかじめ設定されたRPAが自動でアラートを読み取り、対象サーバーにSSHで接続します。担当者はまだ眠っていても、この処理は即時に開始されます。

  3. ログ・プロセス情報を収集

    RPAが「top」や「ps」コマンドを実行し、CPU使用率が高いプロセスの一覧を取得。さらに直近のエラーログファイルもコピーし、一時フォルダに保存します。

  4. 生成AIによる原因推定

    収集した情報を生成AIに渡すと、AIは「cronジョブXが暴走してCPUを消費している」と自然言語で要約します。人間がログを1行ずつ読む必要はありません。

  5. RPAによる一次対応

    AIの推定に基づき、RPAが該当プロセスを強制終了。その後、CPU使用率が下がったことを確認します。

  6. AIによる報告と再発防止メッセージ

    最後に生成AIが「CPU高負荷を検知。ジョブXを停止し、負荷は50%以下に回復。恒久対策としてジョブ設定の見直しが必要」と文章をまとめ、Slackに投稿します。


人間が行うのは「報告を確認し、翌日に恒久対策を検討する」だけです。従来30分以上かかっていた深夜対応が、わずか3分で完了します。


実行例:アプリケーションエラーの初動対応


別のケースを見てみましょう。日中、Webサービスの利用者が急増し、一部のAPIで「HTTP 500エラー」が多発しました。従来なら、担当者が「アクセス集中か?外部システム障害か?」と手作業で切り分けに追われます。

RPAと生成AIを組み合わせると、このように進みます。


  1. アラート通知を検知

    監視ツールが「エラーログ急増」を検知し、メール通知を発行。

  2. RPAによるデータ収集

    RPAが直近1時間のアクセスログを自動収集し、同時にAPI応答時間のメトリクスを取得。

  3. 生成AIによるログ解析

    AIは数万行に及ぶログから「特定のエンドポイント /api/payment にエラーが集中」「外部決済システムの応答遅延とタイミングが一致」というパターンを抽出します。

  4. RPAによる一次処置

    RPAが自動でフェイルオーバー処理を実行し、別系統の決済システムに切り替えます。

  5. AIによる状況整理と報告

    AIは「決済システムの応答遅延が原因。フェイルオーバーで復旧。現在エラーレートは5分以内に収束見込み」と報告文を生成し、担当者に送信します。

人間の作業は「報告内容を確認し、外部システムのベンダーに問い合わせる」だけ。顧客への影響は最小限に抑えられます。



導入メリット


このようにRPAと生成AIを組み合わせたシステム監視自動化は、従来の運用に比べて明確なメリットがあります。

  • 対応速度の飛躍的向上:通知から数秒で自動調査と初動対応が始まり、復旧までの時間を大幅に短縮。

  • 運用担当者の負荷軽減:夜間・休日対応の多くを自動化し、人間は高度な判断に専念できる。

  • ナレッジの自動蓄積:生成AIが過去の障害と照合し、要約レポートを残すことで、属人化を防ぎ知識共有が進む。

  • コスト削減:人件費だけでなく、障害長期化によるビジネス損失を回避できる。

特に中堅企業やスタートアップでは、専任のインフラ運用担当者を多く抱えることが難しいため、このような仕組みは大きな価値を持ちます。


RPAと生成AI導入のステップ


実際に導入する際は、いきなり全自動を目指す必要はありません。段階的に取り入れることが現実的です。

  1. 通知収集の自動化:RPAでメールやSlackのアラートを整理。

  2. ログ収集の自動化:よく発生する障害ごとに必要なログを自動取得。

  3. AIによる要約:取得したログを生成AIで要約し、人間にわかりやすく提示。

  4. 一次対応の自動化:リスタートや切り替えなど定型処理をRPAで実行。

  5. エスカレーション判定:AIが緊急度を判断し、必要なら即時に人間へ通知。

このプロセスを順に進めれば、担当者は安心して自動化に任せられるようになり、結果として全体の運用効率が高まります。


未来展望


今後は、クラウドサービスやコンテナ環境の普及により、監視対象はさらに複雑化していきます。マイクロサービスの分散構造や、SaaS連携による依存関係の増大は、人間だけでは把握しきれません。

その点、生成AIはログやメトリクスを横断的に解析し、関連性を見つけ出す力に優れています。RPAと組み合わせることで、将来的には「自律的に自己修復するシステム運用」が実現するでしょう。これは単なるコスト削減にとどまらず、企業の信頼性や競争力を高める基盤となります。


まとめ


RPAと生成AIを活用したシステム監視自動化は、単なる効率化の枠を超え、運用スタイルそのものを変革します。従来は人間が深夜にログを追い、判断を下していた作業が、自動化とAIの組み合わせによって数分で完結する時代が到来しているのです。

実際の実行例からもわかるように、この仕組みは決して遠い未来の話ではありません。小規模な導入からでも効果を実感でき、企業の成長とともに拡張していけます。

システム運用の現場に疲弊を感じている読者の方は、ぜひRPAと生成AIを掛け合わせた自動化を検討してみてください。それは単なる省力化ではなく、企業を支える「安心の基盤」を築く第一歩となるでしょう。



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