RPA × 生成AI × 障害対応の自動化が切り拓く新しい業務スタイル
- 兎澤直樹
- 2 日前
- 読了時間: 5分

はじめに
システム障害が発生した際、企業にとって最も大きな課題は「対応のスピード」と「復旧の正確性」です。たった数分の遅延が売上損失や顧客信頼の低下につながり、担当者は深夜でも対応を迫られることがあります。こうした状況は、従業員の負担を増やすだけでなく、企業の競争力をも左右します。
この課題を解決する手段として注目されているのが「RPA × 生成AI × 障害対応の自動化」です。RPAは定型作業の迅速な処理を得意とし、生成AIは柔軟な文章理解やログ解析を担います。これらを組み合わせることで、障害発生から報告・初動対応までを自動化し、人の手に頼らない運用体制を構築できます。
従来の障害対応が抱える課題
従来の障害対応フローでは、アラートを受け取った運用担当者がログを確認し、関係部署に連絡を入れ、初動対応を行うまでに一定の時間がかかります。特に次のような課題が目立ちます。
ログファイルやエラーメッセージが膨大で、人間が手作業で確認すると時間がかかる
エラー内容を正確に要約し、関係部署へ分かりやすく伝えるのに労力を要する
担当者が不在の時間帯は対応が遅れ、障害の影響範囲が拡大する
つまり「スピード」「正確性」「負担軽減」の三点において、従来型の障害対応には限界がありました。
RPAと生成AIがもたらす変革
RPAは「ルールに基づく自動処理」を得意とし、生成AIは「非定型的な文章やデータの理解・生成」を担います。この組み合わせにより、障害対応は次のように変わります。
障害発生時、監視システムからアラートを自動取得する
RPAが関連ログを収集し、生成AIに解析を依頼する
生成AIがエラーメッセージを自然言語で要約し、原因候補と対応策を提示する
RPAがその内容をチケットシステムやチャットツールに自動投稿し、担当部署へ通知する
必要に応じて一次対応(サービス再起動など)を自動実行する
これにより、人間が行っていた「収集・整理・連絡」のプロセスを大幅に短縮し、障害対応を効率化できます。
実行例:障害対応の自動化シナリオ
ここで、実際にどのように動作するのかを分かりやすく示します。以下は「Webサービスで応答遅延が発生した場合」の自動化フローの例です。
1. アラート検知
監視ツール(ZabbixやDatadogなど)が「応答遅延」を検知すると、自動的にRPAに通知が送られます。従来は担当者のメール受信待ちでしたが、自動化によりリアルタイムに処理が始まります。
2. ログ収集
RPAが該当するサーバーにアクセスし、直近10分間のエラーログやリソース使用率を取得します。たとえば「/var/log/nginx/error.log」や「CPU使用率のグラフ」などが対象です。
3. 生成AIによる解析
収集されたログは生成AIに渡されます。AIは膨大なテキストを瞬時に要約し、次のようなアウトプットを生成します。
「2025年9月10日10:05頃から応答遅延が発生。原因はプロセス数の急増によるCPU使用率の逼迫と推定。直近でアクセスが通常時の1.8倍に増加。一次対応としてWebサーバー再起動を推奨。」
このように、AIは技術者が理解しやすい要約だけでなく、非技術者でも分かるレベルの報告文も同時に生成できます。
4. 通知と記録
RPAがこの要約をもとに、次のアクションを自動で実行します。
チケット管理ツール(例:Jira、ServiceNow)に障害チケットを作成
社内チャット(SlackやTeams)に障害概要を投稿
担当部署のメールアドレスへ一次報告を送信
担当者は通知を受けるだけで状況を把握でき、初動が格段に早まります。
5. 一次対応の自動実行
あらかじめ定義されたルールに従い、RPAがWebサーバーを再起動します。生成AIが提案した手順を基にRPAが処理を進めることで、無駄のない自動復旧が可能となります。
6. 報告書作成
障害収束後、生成AIが「障害概要・原因・対応内容・影響範囲」を整理したレポートを自動生成し、RPAが所定のフォルダに保存します。これにより、担当者は二次分析や改善策検討に集中できます。
導入メリット
このような仕組みを導入することで、企業は以下のような恩恵を受けられます。
障害対応の初動が大幅に短縮され、影響を最小限に抑えられる
担当者の深夜・休日対応が減り、労働負担が軽減される
ログ解析や報告作成の精度が高まり、ヒューマンエラーを防げる
監査や再発防止のための記録が自動で残るため、管理工数が減る
導入ステップ
実際にRPA×生成AIを活用した障害対応を始めるには、次のようなステップが有効です。
既存の監視ツールとRPAを連携させ、アラート取得を自動化する
よく発生する障害ケース(応答遅延、プロセス停止など)を定義し、RPAに一次対応手順を組み込む
生成AIにログ解析と要約の役割を与え、通知文を自動生成させる
小規模なシステムから段階的に導入し、効果を確認したうえで全社展開する
まとめ
RPAと生成AIを組み合わせた障害対応の自動化は、単なる効率化にとどまらず「事業継続性の強化」と「働き方改革」に直結します。人が行うべきは「障害発生後の根本原因分析や改善策の立案」であり、初動対応や報告作成といった繰り返し作業は自動化に任せるべきです。
今後、システムの複雑化や24時間稼働が当たり前となる中で、障害対応の自動化は必須の取り組みとなります。これを機に「RPA × 生成AI × 障害対応の自動化」を導入し、より強固で持続可能な運用体制を築いてみてはいかがでしょうか。
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