RPA × 生成AIで実現する時間外労働削減 ― 働き方改革の切り札
- 兎澤直樹
- 12 分前
- 読了時間: 4分
はじめに
「残業が当たり前」という働き方は、もはや時代に合わなくなっています。政府が推進する働き方改革や、企業の人材確保の観点からも、時間外労働削減は避けて通れないテーマです。とはいえ、単純に業務量を減らすことは現実的ではなく、限られた人員で成果を維持・向上させながら残業を減らす必要があります。ここで注目されるのが RPA と 生成AIの組み合わせです。本記事では、両者を活用した「時間外労働削減」のアプローチを体系的に解説します。
1. 時間外労働が生まれる背景
時間外労働は大きく以下の3つの要因に集約されます。
単純作業に時間が取られている
定型業務や繰り返し作業に追われ、付加価値の高い仕事に時間を割けない。
非効率な情報収集・整理
資料作成や報告書作成のために、膨大なデータを人が手作業でまとめている。
意思決定プロセスの遅延
上司への確認や調整に時間がかかり、業務が後ろ倒しになっている。
つまり「人でなくてもできる仕事」に人が時間を奪われていることが、残業の温床になっているのです。
2. RPAが得意とする領域
RPAは、定型化された作業を高速かつ正確に処理するのが得意です。例えば：
経費精算データのチェックと転記
顧客リストの整形とシステムへの登録
受発注データの突合と報告書作成
人が手でやれば1時間かかる作業も、RPAなら数分で完了します。これにより「単純作業のための残業」は大幅に削減可能です。
3. 生成AIが補完する役割
一方で、生成AIは「非定型作業」に強みを発揮します。具体的には：
大量のテキストデータから要点を抽出し、サマリーを自動生成
複数のレポートを比較し、傾向や改善点を提示
社内問い合わせに対して、FAQをもとに自然言語で自動回答
従来「人が頭を使って考えるしかなかった作業」も、生成AIが一次処理を担うことで、最終判断にかかる時間が短縮されます。
4. RPA × 生成AIのシナジーで削減できる残業
両者を組み合わせると、単独利用以上の効果を発揮します。たとえば：
経理部門
RPAが請求書データを会計ソフトに入力 → 生成AIが仕訳の妥当性を確認し、注意点を要約。
→ 残業が多かった「月末月初処理」の時間を大幅削減。
営業部門
RPAが商談履歴をCRMに集約 → 生成AIが顧客ごとの課題を要約し、提案資料のたたきを作成。
→ 営業担当者は付加価値の高い戦略立案に集中できる。
人事部門
RPAが勤怠データを集計 → 生成AIが時間外労働の傾向を分析し、改善提案を提示。
→ マネジメント層が迅速に意思決定できる。
このように 「作業時間の削減 × 意思決定の高速化」 が同時に実現し、残業の根本原因が取り除かれます。
5. 成果を最大化する導入ステップ
効果を出すためには、以下のステップで進めるのが有効です。
業務棚卸し
どの業務が残業の原因になっているかを可視化。特に「繰り返し作業」と「資料作成業務」を洗い出す。
RPA適用領域の特定
明確なルールに基づいて処理できる業務から着手。ここで即効性を出す。
生成AIの活用ポイント定義
要約・分類・自然言語回答など「人の思考を補助する業務」に組み込む。
両者の連携シナリオ設計
「RPAでデータ収集 → 生成AIで分析・出力」という流れを作り、分断をなくす。
効果検証と改善
単なる「導入」ではなく、残業時間の推移を定期的にモニタリングして改善を重ねる。
6. 注意すべき課題とリスク
ただし、導入には以下の点に留意が必要です。
品質担保：生成AIの出力には誤りも含まれるため、人のチェック体制を残すこと。
セキュリティ：顧客データや社内機密を扱う場合、オンプレ環境や専用AIサービスの検討が必要。
従業員教育：現場が仕組みを理解しないと「結局人がやった方が早い」となり、効果が出にくい。
7. まとめ ― 真の働き方改革へ
RPAと生成AIは、単なる「残業削減ツール」ではありません。人が時間を奪われていた領域を自動化・効率化することで、社員が本当に価値を生み出す仕事に集中できる環境をつくります。
「人にしかできない仕事」へシフトするための基盤づくり ― それこそが、RPAと生成AIを組み合わせた時間外労働削減の真価です。
残業が常態化している企業ほど、この取り組みは効果を発揮します。短期的には時間外労働の削減、長期的には従業員の定着率向上や生産性の向上につながり、企業の競争力を支える大きな武器となるでしょう。
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