病院の慢性的な人材不足解消の裏にRPAあり!ルーティンワークの自動化で残業時間の大幅削減を実現
- 兎澤直樹
- 11月13日
- 読了時間: 8分
更新日:12 分前
病院・クリニッ

大手町さくらクリニックin豊洲
院長 西山寿子先生
【企業概要】
・企業様名:医療法人社団TIK 大手町さくらクリニックin豊洲
・所在地:東京都江東区豊洲3-2-20 豊洲フロント2F
・創業年:平成19(2007)年
・従業員数:20名
・業種、事業内容:健診・クリニック(医療施設)
・経営理念:品質の高い検査を行い、それに基づいた診断を行うことで、より質の高い予防医療を提供できる医療機関であること
【インタビューご回答者】西山先生(医師・院長)・長峰様(放射線技師)
【インタビュー日】2025年6月17日
大手町さくらクリニックin豊洲様は、2007年創業の東京都江東区にある医療施設です。
日々進歩する医療現場で最新の検査機器を積極的に導入し、高度で柔軟な検査や処置、予防医療を提供しています。
今回は、そんな同院におけるRPA導入のきっかけ、どんな業務を自動化しているのか、RPA運用の実態についてお伺いしました。

変遷し続ける医療現場で、理想とする予防医療の実現のために基盤としてRPAを導入
―まず、RPA導入の背景を教えていただけますか?
RPA導入以前は、患者様の予約情報や健診結果などの膨大なデータを複数のシステムにまたがって入力することに、非常に多くの時間と人員を割かれていました。
例えば、入力作業のミスを防ぐためのダブルチェックには、本当に多くの人手を要し、残業に直結していました。また、検査項目も多く、業務の煩雑さゆえに事務職員の離職率が高く、新規の事務職員に一から仕事を教えなければならないことにも頭を抱えていました。
そもそも医療業界自体が完全に人手不足であり、求人募集をかけても採用に至らないのが現実です。それは、私たちのクリニックも例外ではありませんでした。
特に、新型コロナウイルス蔓延によるしわ寄せから、秋に健康診断が集中するようになり、当時の残業時間は「22時までには帰る」ことが目標になる程に圧迫されていました。
そんなときに出会ったのがRPAです。書店で買ったRPA関連の本のうちの1冊がドットコネクト代表・兎澤さんの『自動化経営の教科書 小さい会社がたった3カ月で変わる! RPA活用プロジェクト』を読みました。
書籍内に掲載されていたQRコードから実際の動作を動画で確認できたことで、「素人の私たちでも活用できるかもしれない」という期待とイメージが湧きました。その後、ドットコネクトさんに連絡を取って詳しい話を聞いた上で、導入を決意しました。
私たちのクリニックでは、受診いただくメリットを考えた最新の予防医療を行うことを心がけています。日進月歩で治療法が確立されていく度、検査方法・検査項目も日々更新されます。フットワークを軽く構えて、それらの技術進歩に順応することは、比例して事務手続きを増大させます。
それでも、検査内容が画一的になりがちな大手医療機関などでは実現不可能な予防医療機関でありたいと考えているのです。
RPAの導入により、大量かつ複雑なデータ入力を、ミスなく自動化することがスタッフの負担軽減や人手不足解消につながると思います。それによってストレスの軽減、精神的ゆとりの確保を実現し、前向きに仕事ができる環境を整えていきたいです。
加えて、これまで事務作業に奪われていた時間を、患者様とのコミュニケーションや予防医学の研究に充てていきたいです。

膨大な予約情報と煩雑な健診結果の事務処理負担を最小化し、正確な業務運用を実現
― RPAでどのような業務を自動化しているのですか?
まず自動化したのは、心電図データを健康診断システムに入力する業務です。具体的には、心電図・肺機能のそれぞれの結果入力です。以前は、1日当たり合計70件ほどの結果を検査技師が手入力し、その後、別の検査技師がダブルチェックを行っていました。
現在は結果入力を自動化し、シングルチェックのみになったため、合計6人分を要していた業務が3人分に半減し、ヒューマンエラーも防げるようになり正確性も向上しました。
導入したMICHIRU RPAは画像認識技術を軸にシナリオを組み立てるため、日本医師会が提供する医事会計ソフト「ORCA」との互換性を確保することも容易にできました。
続いて、事務の大部分を占めていた予約登録業務を自動化しました。具体的には、住民健診や企業健診のKintone内予約情報を電子カルテと健診システムに入力する作業です。多いときには1日85件ほどを手入力していたため、大きな改善となりました。
また、問診内容による結果判定の健診システムへの入力も自動化しました。
他にも、月間15時間を要していた企業の所属部署登録も自動化しています。
今後は、健診結果の印刷業務などの自動化を検討しています。内容としては、受診者毎に送付先(自宅か会社)と結果用紙(1枚式か2枚式)を選択し、印刷をかける業務です。現状、この業務のために朝30~60分早く出勤する必要があり、自動化を切望しています。
結果用紙の選択はRPAには難しいと予想されるため、最初の読み取り帳票に人間が枚数指示を入力するなどの工夫が必要だと考えられます。
また、煩雑化している請求チェック業務の自動化もしていく予定です。

RPAが活躍できる場づくりの大切さ
―RPAツールの活用を推進していく上で課題と感じたこととと対応策を教えていただけますか?
RPAを活躍させるには前提として、業務内容自体を電子化・データ化させる必要があります。しかし、多くの企業健診を受け付けている業務形態上、予約情報がFAXで送られてくることも少なくありません。RPAに任せられる仕事を増やすために、予約のペーパーレス化などを検討しています。
また、RPA稼働中のエラーについても課題と感じています。そもそも自動化したい内容を詳細に把握した上でシナリオ作成をしないと、稼働中のエラーにつながってしまいます。
RPAのエラーを減らすために、詳細な作業過程や稼働中のイレギュラーを把握できる人がシナリオ作成をすることでエラーを予防しています。
それでも、RPA稼働中にエラーが発生することはあります。問題発生時に対応できる人材の育成・確保も重要だと考えています。
私たちの場合、比較的簡単と予想されるシナリオは自ら作成し、難易度の高い業務はドットコネクトさんに作成していただいています。
「検査で早く見つかってよかったです」の言葉が最新予防医療のやりがい
― 手間が増えてRPA導入の一因にもなるほどの「オプション検査の頻繁な追加」等を行っている理由を教えていただけますか?
私たちのクリニックでは頻繁にオプション検査の変更や、機器の入れ替えがあります。オプション検査の主な目的は、「病気の可能な限りの早期発見」と「病気になる前の段階での異常値の発見」です。
「病気の早期発見」の検査としては、2024年にノーベル賞を受賞したマイクロRNAを用いた検査があります。尿検査だけでがんの早期発見ができます。特に発見が難しい膵がんを、早期で見つけることができるのは頼もしい限りです。
「病気になる前段階での異常値の発見」では、脂肪肝の程度を数値化できる超音波検査機器の導入です。脂肪肝は放置しておくと肝がんになる可能性も指摘されていますが、痛みのない検査で食事運動療法の効果を判定する指標はあまりありません。
当院では、脂肪肝を数値化してお知らせすることにより、モチベーションを維持し脂肪肝の改善につなげていけたら、と思い新しい超音波検査機を導入しました。
身体構造の複雑さを考慮し、本気で予防医療と向き合うと、オプション検査はやはり必要です。実際に、かかりつけ病院での基本検査とは別に、オプション検査の単項目のみを受けに来る患者様もいらっしゃいます。
「検査で早く見つかってよかったです。」「お陰で今も元気にやってます。」と言われることがやりがいであり、生きがいとなっています。
また、最新機器を導入することで、学会での発表をより深く理解できたり、新しい活用方法を編み出したりできます。その結果、ルーティンワーク化を防ぎ、意欲的な職員のやりがいにもつながっています。
例えば、ABUS(乳腺自動超音波診断装置)は健診業界でも私たちのクリニックが草分け的に導入した検査機器です。従来、乳腺超音波検査は検査技師が自分の手で(ハンドフェルド)でプローブを動かし行っていましたが、病変を見つけられる一定レベル以上の技術を持った女性の検査技師を雇うのは難しく、出産・育児と重なると3~4年で退職されてしまうこともあります。その点、ABUSは、自動でプローブが動き3Dの画像を収集するので、検査技師の技量に左右されにくく、安定した結果を保証することができるため、導入して良かったと感じています。
もちろん、このようなマニュアル化しづらい健診体制は事務処理の増加を招きます。RPAの導入によって、自動化可能な事務処理をRPAに任せていくことで健診体制を維持し、離職率の低減も達成できると考えています。
導入後の効果として、臨床検査技師の残業時間はほとんどなくなり、事務職員も残業時間が大幅に削減されたことで、最近の帰宅目標時間は導入前より2時間も早くなりました。

最後に・・・
―最後に、弊社に一言いただけますか?
当クリニックは医療機関であり、システム上オンラインでのRPAサポートだけでは運用が難しい状況でした。他社RPAも考えましたがサポート体制に懸念がありました。
そんなときに出会ったのがドットコネクトさんです。業務に日々追われる中、現地まで足を運んでくださり、いちからシナリオ作成をしていただけていることにとても魅力を感じております。
自分たちだけでRPAを順調に稼働させるのはなかなか苦労すると思うので、ぜひこちらのサポート体制をお勧めしたいです。
―大変ありがたいお言葉です。ありがとうございます。
引き続きサポートさせていただきます!



