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RPA × 生成AI × コンプライアンス強化企業に求められる「持続可能なリスク管理」の新潮流

  • 兎澤直樹
  • 10月2日
  • 読了時間: 5分

更新日:10月7日

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はじめに


近年、企業活動におけるコンプライアンス違反は、社会的信用の失墜や巨額の罰金につながる重大リスクとして注目を集めています。特に金融、医療、公共機関といった規制の厳しい業界においては、内部統制や監査対応の徹底が経営課題の中心に位置しています。しかし、法令や規制は複雑化・多様化し続け、従来の人力中心のチェック体制では限界が見え始めています。

ここで注目されるのが、RPAと生成AIの掛け合わせによる「コンプライアンス強化」です。本記事では、その仕組みや活用シナリオ、導入メリット、そして実務での注意点を整理しながら、未来のリスク管理の在り方を考察します。


1. コンプライアンス強化の現状課題


まず、企業が直面している代表的な課題を整理してみましょう。


  1. 法規制の複雑化

    国内外で適用される法令は増加しており、個人情報保護法、金融商品取引法、マネーロンダリング規制、ESG関連開示など、対応すべき領域は拡大しています。

  2. 人力監査の限界

    コンプライアンス担当者は大量の契約書、メール、報告書、会計データを精査しなければなりません。属人的で時間のかかる業務が多く、ミスや見落としのリスクは避けられません。

  3. グローバル化と情報量の増大

    多国籍企業では、国ごとに異なる規制に対応する必要があり、現場の負担は急増しています。さらに、膨大なトランザクションデータやSNS上の発言もリスク監視の対象となり、処理対象は拡大の一途をたどっています。


2. RPA × 生成AIで解決できること


このような状況下で、RPAと生成AIを組み合わせることで、以下のような効果が期待できます。

  • RPAの強み

    定型的な入力・転記・抽出・照合作業を自動化することで、人的ミスを排除し、監査用データを一元化。ログを残すことで追跡性(トレーサビリティ)も担保できます。

  • 生成AIの強み

    自然言語処理により、契約書や報告書、メール文面からリスクの兆候を抽出。最新の規制文書を自動要約し、現場担当者に分かりやすく提示することで、知識の属人化を防ぎます。

この2つを掛け合わせることで、「定型作業の自動化」+「非定型情報の理解」という両輪が回り、従来は困難だったコンプライアンス強化の自動化が現実的になります


3. 具体的な活用シナリオ


(1) 契約書レビュー

  • RPAが社内の契約書管理システムからファイルを自動収集。

  • 生成AIが条項を解析し、独占禁止法や個人情報保護に抵触する可能性のある表現を自動でハイライト。

  • 担当者はリスク箇所のみを重点的に確認でき、作業効率と精度が向上します。

(2) 取引モニタリング

  • RPAが会計システムから取引データを定期抽出。

  • 生成AIが不自然な金額パターンや説明不足の勘定科目を自然言語で警告。

  • 不正会計やマネーロンダリングの兆候を早期に発見できます。

(3) 社員教育と相談窓口

  • 生成AIが法令や社内規程をもとにFAQを生成し、チャットボットとして社員の質問に即時回答。

  • RPAが教育受講状況を記録し、未受講者へのリマインドを自動送信。

  • 内部統制の「徹底度」を高める仕組みが実現できます。

(4) レピュテーションリスク監視

  • RPAがSNSや外部ニュースサイトを定期巡回。

  • 生成AIが企業名やブランドに関するネガティブ言及を要約し、炎上リスクを可視化。

  • 危機管理の初動対応を迅速化できます。


4. 導入メリット


  1. リスク低減

    違反検知の精度向上により、法的リスクや社会的信用失墜のリスクを抑制。

  2. コスト削減

    膨大な監査作業を自動化することで、担当者の負荷軽減と人件費削減を同時に実現。

  3. スピード向上

    規制変更や市場動向への迅速な対応が可能になり、グローバル展開にも柔軟に対応できる。

  4. 透明性と説明責任の確保

    RPAによるログ管理と生成AIによる要約提示で、監査対応や社内報告の説得力が増す。


5. 導入上の注意点


  • 生成AIの誤検知リスク

    AIが誤ってリスクなしと判断する「見逃し」や、逆に過剰警告を出すケースがあります。必ず人間のレビューを残す「Human in the Loop」が必要です。

  • データプライバシー

    生成AIに機密情報を入力する際は、暗号化やアクセス制御を徹底しなければなりません。オンプレミス環境での運用やプライベートモデル活用も選択肢となります。

  • ルールの明確化

    AIが検出したリスクに対して、社内で「どの水準で報告・是正するか」の基準を策定することが不可欠です。

  • 従業員教育

    AIに依存しすぎず、最終判断は人が行うという文化を根付かせる必要があります。


6. 今後の展望


RPAと生成AIを組み合わせたコンプライアンス強化は、まだ黎明期にあります。しかし、大手監査法人や金融機関ではすでに試験導入が進み、「AI監査」「AIコンプライアンス」といった新しい概念が注目されつつあります。

今後は以下の方向性が予想されます。

  • 規制当局によるAI活用ガイドライン策定

  • コンプライアンス・アズ・ア・サービス(CaaS)という新たなビジネスモデル

  • ESG・サステナビリティ分野でのAI監査普及

  • 国境を越えたデータ取引やプライバシー規制対応の強化


まとめ


RPAと生成AIを活用したコンプライアンス強化は、単なる業務効率化にとどまらず、企業の持続可能性を左右する戦略的テーマとなっています。

  • RPAは「定型業務の正確性」を保証

  • 生成AIは「非定型情報の洞察」を補完

  • 両者の組み合わせにより「予防型コンプライアンス」が可能に

これからの企業に求められるのは、違反が発生してから対応する「事後型」ではなく、違反を未然に防ぐ「事前型」のリスク管理です。RPAと生成AIの統合は、その実現に大きな一歩をもたらします。



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