top of page

RPA × 生成AI × スクリプト作成補助―業務自動化を加速する新しいアプローチ―

  • 兎澤直樹
  • 6 時間前
  • 読了時間: 6分
ree

はじめに


近年、RPAは企業の定型業務を効率化するための強力なツールとして広く導入されています。しかし、RPAを構築・運用する際に避けて通れないのが「スクリプト作成」という壁です。業務の流れを自動化するには、Excel操作やWebシステムのクリック処理などをスクリプト化する必要があり、初心者にとっては習得が難しい部分となります。

この課題を解決する鍵が「生成AI」との掛け合わせです。ChatGPTのような生成AIを活用することで、スクリプトの作成や修正を補助し、専門知識がなくても自動化の仕組みを迅速に構築できる環境が整いつつあります。本記事では、「RPA × 生成AI × スクリプト作成補助」という新しい組み合わせがどのように業務効率化を加速させるのかを解説し、実際の実行例を通じてイメージを具体化します。


RPAの現状と課題


RPAは主に「定型的な業務」を対象にしています。例えば、以下のような作業が典型例です。

  • ExcelやCSVからのデータ入力・転記

  • Webシステムへのログインとデータ登録

  • 請求書や契約書のPDF処理

  • メール送信やレポート作成

これらの業務をRPAに任せることで、人間はより付加価値の高い仕事に集中できるようになります。

しかし実際の導入現場では、次のような課題が浮かび上がります。

  1. スクリプト作成の難易度

    各ツールには専用のスクリプト言語や記法が存在し、初学者にとっては習得コストが高い。

  2. 仕様変更への対応

    WebページのHTML構造が変わる、Excelの列構成が変わるなど、小さな変更によりスクリプトが動かなくなるケースが多い。

  3. 属人化

    スクリプトを一部の担当者しか理解できず、他の社員が修正できないため業務が止まるリスクがある。

こうした壁が、RPAの普及と活用拡大を阻んできました。


生成AIによるスクリプト作成補助の可能性


生成AIは自然言語を理解し、プログラムコードを生成する能力を持っています。例えば「ExcelのA列を読み取って合計値を出すPythonコードを書いて」と指示すれば、実際に動作するコードを提示してくれます。この仕組みをRPAに応用すると以下のような利点があります。

  • 自然言語で指示可能

    プログラミング知識がなくても「請求書フォルダ内のPDFから日付と金額を抽出してCSVにまとめて」と伝えるだけで、基盤となるスクリプトが生成される。

  • エラー修正が容易

    実行中にエラーが出ても、そのメッセージをAIに入力すれば、修正版のスクリプトを提示してくれる。

  • スクリプトの再利用性向上

    作成したスクリプトを他の業務に合わせて改変する際も、生成AIに条件を追加・修正して依頼するだけで済む。

これにより、RPA担当者は「コードを書く人」から「業務要件をAIに伝える人」へと役割が変化し、導入障壁が一気に下がります。


実行例①:Excelの転記処理を自動化


シナリオ

営業部門では、毎月の売上データをExcelファイルから管理システムに転記する作業が発生しています。従来は手作業で入力していましたが、これをPythonスクリプトを介してRPAに実装したいとします。

生成AIへの依頼例

「ExcelのA列に顧客名、B列に売上額が入っています。これをCSV形式で出力するPythonコードを書いてください。」

AIが提案したスクリプト例

import pandas as pd


# Excelファイルの読み込み

df = pd.read_excel("sales.xlsx")


# 必要な列を抽出

data = df[['A列名', 'B列名']]

data.columns = ['顧客名', '売上額']


# CSVに出力

data.to_csv("output.csv", index=False, encoding="utf-8-sig")

実行結果

このスクリプトをRPAツールに組み込めば、ボタン一つでExcelからデータを読み取り、CSVに変換し、システムに取り込めるようになります。これにより、毎月数時間かかっていた転記作業が数分で完了します。


実行例②:Webフォームへの自動入力


シナリオ

人事部門では、新入社員の情報をWebシステムに登録する必要があります。Excelにまとめられた情報を元に、社員名やメールアドレスをフォームに自動入力させたい。

生成AIへの依頼例

「Seleniumを使って、社員一覧Excelの内容をWebフォームに入力するスクリプトを書いてください。」

AIが提案したスクリプト例

from selenium import webdriver

import pandas as pd

import time


# データ読み込み

df = pd.read_excel("employee.xlsx")


driver = webdriver.Chrome()


# Webシステムにアクセス


for _, row in df.iterrows():

    driver.find_element("name", "username").send_keys(row['氏名'])

    driver.find_element("name", "email").send_keys(row['メール'])

    driver.find_element("id", "submit").click()

    time.sleep(1)


driver.quit()

実行結果

このスクリプトをRPAに組み込み、シナリオ化することで、大量の新入社員情報を一括登録できます。従来は担当者が数日かけて入力していた作業が、数十分で完了するようになります。


実行例③:PDFからの情報抽出


シナリオ

経理部門では請求書PDFから「支払期日」「金額」を読み取り、台帳に記録する必要があります。OCRを使う方法もありますが、生成AIを活用するとスクリプト自体も簡単に整備できます。

生成AIへの依頼例

「PyPDF2を使って、フォルダ内の請求書PDFから金額と日付を抽出するPythonスクリプトを書いてください。」

AIが提案したスクリプト例

import os

import re

import PyPDF2


folder = "invoices"


for file in os.listdir(folder):

    if file.endswith(".pdf"):

        with open(os.path.join(folder, file), "rb") as f:

            reader = PyPDF2.PdfReader(f)

            text = ""

            for page in reader.pages:

                text += page.extract_text()


            date = re.search(r"\d{4}/\d{2}/\d{2}", text)

            amount = re.search(r"¥\d{1,3}(,\d{3})*", text)


            print(file, date.group() if date else "不明", amount.group() if amount else "不明")

実行結果

これを利用すれば、数百枚の請求書から一括で日付と金額を抽出できます。経理担当者は確認と修正だけに専念でき、業務効率が飛躍的に向上します。


今後の展望


RPAと生成AIの組み合わせは、単なる業務効率化にとどまらず、「誰でも自動化を構築できる時代」を切り開きつつあります。これまではプログラミング知識がなければRPAの活用は限定的でしたが、AIの補助により非エンジニアも業務自動化をリードできるようになります。

さらに、将来的にはAIが業務フロー全体を理解し、最適な自動化シナリオを提案する段階へと進化するでしょう。たとえば、「この業務は毎日2時間かかっています。RPA化すれば90%削減できます」といった具体的な提案をAIが示すようになると、経営層にとっても大きな意思決定材料となります。


まとめ


「RPA × 生成AI × スクリプト作成補助」は、これからの業務自動化の主流となる可能性を秘めています。従来は専門知識が必要だったスクリプト作成が、自然言語による指示で可能となり、誰でもRPA導入をスムーズに進められる時代が到来しました。

今回紹介した実行例(Excel転記、Webフォーム入力、PDF抽出)は、どれも実務現場で頻繁に登場するケースです。これらをAIとRPAで自動化することにより、単なる効率化にとどまらず、組織全体の生産性向上につながります。

これからRPAの導入を検討している企業にとって、生成AIとの組み合わせは大きな追い風となるでしょう。自動化の未来を切り開く第一歩として、ぜひ自社の業務に取り入れてみてください。




↓RPA運用サポート.comへの無料相談はこちらから

全国リモート対応可能。お気軽にお問い合わせください。


↓こちらから資料をダウンロードできます


bottom of page